カソトナはかつてイングランドのフットボールについてこう語っていた。
「この国のフットボールが死んでいるって?冗談言うなよ。たしかにゲームがつまらない時もあるけど、個々のプレイヤーは皆、ベースがしっかりしたヤツらばかりさ。ドリブルの仕方、それにシュート、パスもイングランド人のプレイは、とても洗練されているよ」
とても彼らしい評価である。
あくまで基本に忠実に、しかも攻撃的なプレイを柱に考え、きっちりとイングランドのフットボールとは何かを物語る。
つまりそれは、カントナ自身がフットボールの神髄とは何かを熟知している証明でもある。
だからこそ、彼には真の英国紳士らしい振る舞いができるプレイヤーになってほしいと誰もが望んだ。
だが、やはり、生まれついてのキャラクターだけは、どうにもならなかった。
あの忌まわしきシーンは、今思い出しても気分が悪くなる。
そう、95年シーズンの1月に起こしてしまったカントナ自身にとっても最悪の暴行事件である。
それは対クリスタル・パレスとのプレミア・リーグ公式戦での出来事だった。
後半3分、カントナに相手DFである「リチャード・ショー」がファウルを見舞う。
これに案の定激怒したカントナは、このDFに1発2発と蹴りをぶち込む。
当然、主審は彼の暴挙を見てレッドカードを出した。
撫然として退場しようとするカントナ。
クリスタル側のサポーターは、彼にブーイングの激しい嵐を巻き起こす。
そして、カントナがタッチライン沿いに歩いていった時、あの事件は発生してしまった…:も観客のひとりがカントナに汚いスラングで罵声を浴びせたのだ。
それに再び激高したカントナは、スタンドに向かって走り、飛び上がってその観客を蹴り倒してしまう。
さらにカントナはこれだけに収まらず、この観客に馬乗りとなって何発ものパンチをぶち込んだのである。
当然、それを見たマンチェスターの選手や、周囲を警備していた警官が彼を阻止しようと飛びついたが、それでもなお、攻撃を続け、結局取り押さえられて、警察に連行されてしまったのだ。
前代未聞、常軌を逸した、どんな形容句でも表現し切れない暴挙としか言いようがない。
少年に夢を与えるはずのフットボール・プレイヤーが絶対にしてはならない行動である。
石塚孝一(蹴球ファンクラブ)